燃えよドラゴムズ

長らく低迷に喘いでいた中日ドラゴンズのリーグ優勝がかかった試合だということで食い入るようにテレビを見つめていた。決戦の舞台はナゴヤ球場、相手は巨人、お膳立ても完璧というわけだ。少々時代背景が気になるところではあるが。何だったら先発も山本昌だったかもしれん。胴上げの瞬間を見ようと球場に集ったファンの熱気をモニター越しに感じながら、たこ焼きのようなものをつまんだ。ゴムのような味とゴムのような食感がした。

試合は見事37-19で中日が勝利、思い返せばアメフトのようなスコアだが最後はセンターライナーをダイビングキャッチという守りの野球に徹した中日らしいアウトで締め。幾年かぶりのリーグ制覇に浮かれていると、不意に母から最近流行りの応援グッズだとしてバブルヘッド人形が差し出された。メジャーリーグではよく見るがついに日本にもその波が来たらしい。揺れる主力選手の頭を見つめていると、この商品のウリとして何とこの頭が食べられるのだ、と告げられた。ので、客観的に見てグロテスクな光景ではあるが、物は試しと早速かじってみると口の中でゴムのにおいがいっぱいに広がったので思わずその場で吐き出した。脇に投げ出されていたビニール袋を覗いてみると、中に野球選手の生首を模した可食の物体が3つほど。加えて袋から放たれた強烈なゴム臭に顔を背けざるを得なかった。

ほとんど間髪を入れずに、これお父さんが使っていたものだから、と母がさらに爪切りを差し出してきた。もはや中日の優勝などどうでもいいことのようだ。爪切り、と言ってもハサミ亜種のような形状ではなく、切った爪がどこかに飛んでいくことのないように刃と箱が一体になった、ちょうど鉛筆削りのような具合である。これが父の形見だと思うと大事にしなければならないような気もしたが、爪切りとしてポータビリティが致命的な上に置き場所に困るという欠点を抱えているし箱の中にまだ誰のかわからない爪が残っているし。どうしたものかと手をこまねいていると、素晴らしい機能がある、と母が言うので、ややワクワクしながら居住まいを直して聞いてみると、何と箱部分以外は可食なのだという。またか。呆気にとられた俺を差し置いて追い打ちのようにしゃべり続ける母、このタイプの爪切りは元々は父の発明品で商業的ヒットを記録したこともあり、俺が生まれる前にはこちらの爪切りが主流だったこともあるそうだ。