扇情のメリークリスマス

生活必需品(主にヨーグルトのこと)を買い足しにスーパーに入ると一角で流れ出すジングルベル。

嘘であろう、心療内科で処方された睡眠薬のせいで1か月もの間眠りこけていたというのか。先週までトリックとトリートの二択を迫られていたはずなのに。確かにこの聞き覚えのあるフレーズは一つの意味に向かっており、とどのつまりはメリークリスマス。だが入り口で焼き芋屋とすれ違ったのも、生鮮食品コーナーで紅葉の飾りつけが大々的に行わているのも見間違いではなかった。11月上旬とは思えない陽気に、羽織ったパーカーの内がやや汗ばんでいる中で、このような。気になって辺りを見回し、再度クリスマス的なもの無いか視認しようとするも皆無。クリスマスケーキの予約も始まっておらず。靴下的なオブジェの一つも見当たらない、その上でBGM一本で無理くりにでも季節感を出そうとする商魂には頭が下がるが、結果的に空間が捻じ曲がってしまっている。

季節感、とは書いてみたもののやはりまだ11月も初頭。脳までクリスマス仕様にするにはBGMだけではエネルギーが足りていない。実際暖かな店内と何一つ平素と変わらない品ぞろえで、特別な購買意欲をそそられることが一切無かった。むしろ暑さと感じ取れるほどの気温のおかげで、アイスに手が伸びそうになったのは特別な購買意欲と言えるのかも知れん、単なる気分と言ってしまえばそれまでだが。帰り際に普段は買わないような焼き芋を買ってから帰ったのも特別な購買意欲と言えるのかも知れん。無意識のうちにクリスマス気分に乗せられて浮かれて沸いた意欲であることを否定することも、今となっては出来ない。それが店側の狙いであろうか。少なくともヨーグルトと焼き芋を買ったことまでは覚えているが、何か余計な買い物をしはしなかっただろうか。思い出せない。あそこは空間が捻じ曲がってしまっている。