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63 湯醒め

日記

風呂に入るのに、すごく緊張した。

風呂から足が遠のくのには20代男性には割とありがちな億劫だ、という理由もあったが、それにしても風呂に入るのに緊張してずいぶんと二の足を踏んだ。何せ風邪が長引き結構な期間風呂に入っていなかった、初めて義母をお母さんと呼ぶような、耳のすぐそばを通り抜けるような新奇な経験となって入浴という行為は俺の目の前に現れた。年に300回くらい経験するはずの頻出イベント。2月、細雪の降りしきる中をバス15分徒歩10分で銭湯に向かうくらいには風呂を好んでいたはずなのに俺は。試しに心中で日めくりつつどれだけの日数風呂に入っていないかを数えてみたところ、指折るその手に確かな殺傷能力が宿っていた。驚嘆そして納得。そんだけ間空ければそりゃ緊張もすらあな。風呂に入ることの主たる目的と言えばその日の汚れを落とすことな訳だが、人間に汚れが付着しているというよりは汚れに俺が張り付いていると言った方が正鵠という現状、湯に浸かればたちどころにヘドロの泡となりて人魚姫のように消滅するかも分からんのだ。

戯れに世界名作劇場を汚すのは良くない。せいぜい俺の表皮からドロドロした膜のような層がペローンと剥がれ落ちて風呂の水分を吸収、俺と同じ形になって動き回るくらいが関の山。いやこれも言い過ぎだけど。息子のビオレデビューに立ち会う父親のように膠着していても仕方がない、このまま放置していては俺から放たれる臭気がさらに濃縮されて行政が公害対策に乗り出してしまうし湯も冷める。どっかで体洗えないかな。雨乞いでもするか。病み上がりだけど。