57 日本語で学ぼ

新学期も始まったので生物物理学です。見慣れた部屋のはずなのにいざ入るとどうも雰囲気が違う、見知らぬ連中が固まって座っておりよく分からぬ言葉で話している。それ即ち留学生。平均身長とか何から何まで我々日本人よりも一回り大きいので、固まっていると異様な威圧感が生まれて平和な講義室が植民地の様相を呈す。無条件降伏せざるを得ないようなデカい声でワッツアップ?とか言いながら挨拶を交わす。フルハウスでしかお目にかかれないと思っていたテンションで、だ。

この際だからはっきりと言うが、英語が苦手。教科としての英語は別に苦手ではない。落第点を取ったことはない、むしろ学業の面では英語に助けられたと言って差し支えない。英語という言葉が苦手だ。実際に英語が話されている場面を第三者的な立場から傍観していると、ただの日常会話のはずなのにそれこそフルハウスの一場面にしか見えなくなる。アクセントが無ければ一音一音が意味をなさず単語としての意味が通じないので、是が非でも抑揚を強制される性質のためであろうか、ともかくもサウスパークなら登場から5秒で臓物をお披露目していそうな小太りのメガネも表情筋をぐにゃぐにゃさせながらハウドゥユードゥ。俺があそこまで無茶して喋れば顔中筋肉痛は必至、それも2日後に。

喋る人皆陽気に見えてくるのが何だか朝から眩しくて、できるだけ彼らとは距離を取ろうと逃れ逃れて陣取った片隅。時間が経つにつれて徐々に日本人の学生も教室に集まりだしパワーバランスが完全にこちら側へ傾倒、独立宣言も吝かではないという頃合いになったところで教授が到着。何やらカタカナ英語でもごもごと留学生諸子に語り掛けるとぞろぞろと教室から発っていく彼ら。どうやら手違いでこの講義に出席していたようで、これからきちんと英語で講義が行われる教室へと向かうらしい。連中、何しろ固まって席を押さえていたからぽっかりと穴が開いた講義室、ひそひそと話す学生ともごもごと話す教授だけが残された教室は火が消えたように寂しい。周りには見知らぬ日本人。寂しい。寂しい。