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54 仮免ライダー

エイプリルフールだがそれに見合うだけの嘘を持ち合わせていないので、俺はエイプリらない。4月1日。自動車免許を取って一年が経った。全然運転していない。教習で嫌というほど自分の才能の無さと向き合うのは辛く、そのトラウマに今でも引き摺られている。ATに限られた人種にも関わらず教官に頭ごなしに頭ごなされる日々を経ていることを友人に明かすと彼にも頭ごなされ、男ならMTだろ!と黄ばんだ歯をちらつかされた。最初の選択についてしばしの後悔をしていると所内教習中、目の前でMT車がゲリラ停止したので我に返った。

繰り返すが全然運転していない。DVDを返しに行く際に乗ったりはしたがそれくらいである、しかし1年という時間は着実に降り積もり俺からわかばマークというエアバッグを奪い去っていった。わかばマーク。ヘタクソワッペン。好きな呼び方をするといいが、これを貼っていると事故を起こしても痛いの痛いのとんでけで済むし、万が一裁判が報道されても法廷イメージをデフォルメしてくれるという噂もあり俺はこれがないととても車を転がす気にはなれなかったし、今から過ごす間もそうだろう。ただでさえスリリングだった公道が一層凶暴性を増してくる。車線が消えているのが妙に気になるし、バックミラーが大型車で満たされる機会が増えた気がする。色んなNPCがあの手この手で勇者を亡き者にせんとするRPGなんて俺はやりたくない。加えて我が街魔境名古屋、ホームだからといって車間距離を詰めることによる歓迎方法は一考の余地がある、あの路肩の40っていう数字は通過した時にもらえる得点か何かだろう。というか今思えば路上教習中も若い教官とポケモンの話とかしてた。この意識の低さ。完全に見て見ぬ振りするタイプの加害者であり、俺もまたこの魔都を築き上げるNPCの一人に過ぎぬ。勇者は別のどこかにいる。わかばマークになど頼らない、本物の勇者が。