34-空即是色

痩せる。

事の発端は整骨院である。昨年夏から私を悩ませ続けていた腰痛を何とかするために整体に通っているのだが、マッサージの途中先生が棒from藪に「体重何キロ?」と。初診の際、書類上に赤裸々に書き綴ったはずの数値からほとんど変化していないものをもう一度口頭で伝えるという羞恥医療、オプションとして言葉責め料金が加算されていないか心配ではあったが、先生の技量的に秘孔を突いて爆散させられる可能性も考慮すれば77キロです。そっかあ、じゃあ痩せないとね。正確にはこんな早い展開が待っていたわけではないが(腰への負担と体重の因果関係の説明はちゃんとあった)私は楽して腰を軽くしに来たのに、苦労して体まで軽くしろとは。どうにかして私に痩せさせようとする白衣の調教師を振り切ろうと今日の天気の話など振ってみるも寒い→代謝不足→痩せるみたいな堂々巡り。もはや彼の前ではミミズだってオケラだってアメンボだって私を痩せさせるための手駒に過ぎない。思えばここに通院している高齢者の方々も太っている人というのは中々見ない。その話術を国家の為に用いる人生も悪くないのではと思われる。具体的に何をすればいいのか、尋ねてみると徐々に炭水化物を減らせばいいとのこと。聞けば簡単そうだけどもうどんと白米くらいしか信頼できるものがない人生がそこにはそびえ立っている。

ところが後日、友人とのLINEでのやり取りで休みに入ったことを伝えると目標は?と訊かれたので、そういえば痩せなきゃやばいんだよね(笑)と返すと、麺ばっか食ってたら6キロ痩せたよ、と。遠く東京砂漠に一人暮らす彼が麺類まみれになるのも致し方無いがそれでも麺類すなわち炭水化物ばかりを食って痩せたという揺るがない事実。片や炭水化物を抑えろと言い片や炭水化物ばかり喰らい痩せたと言う、まさか最強の矛と盾を売る商人が私の町にもやってくるとは思わなかった。じゃあその矛でその盾を突いたらどうなるんだ?そんな質問は野暮中の野暮、最強の武器と防具があるなら両方揃えればいい。つまり何も食わない。痩せる痩せる。色即是空。