25

整骨院にて、周りをずらっとご老体に囲まれオセロの原理により私の体にも高齢化の波が押し寄せていたところだが早めに名前を呼ばれ危うくセーフ。人間か漬物石かで言うと漬物石の方が近いくらいの窮状を先生に訴えると「腰の牽引、やってみましょうか」とかのたまわれたで、困った。

腰とはすなわち腰のことであり牽引とはすなわち牽引のことであるのだろうが、その二つが適度な条件で反応することでこんなにも意味不明瞭になるとは思ってもみなかった。この出会いのコンパニオンの言語野をぜひとも覗いてみたい衝動が止まらないが、それ以上に私の腰が牽引されてしまう!とドナドナ的なイメージが止め処なく湧いてくる。出荷か、出荷されるのか私の腰。いつかは離れ離れになる運命の上半身(以下彦星とする)と下半身(以下織姫とする)、だがどうせ出荷されるというのならばオーロラの見える土地がいいかなあ、そんな私をよそに先生は私の体に通電。15分。

いよいよ腰の牽引。苦節二十余年、長かったようで短かったような、はたまたその逆か、私の腰は牽引され彦星と織姫が今生の別れを迎えることになってしまった。などということは全くなく、専用の機械でぐいと織姫を引っ張って背骨の間隔を広げようというものらしい。普段我々の体にかかる重力とは相当なものらしく、メジャーな症例として背骨の隙間にある軟骨が潰れたりするのだがその負担を軽減するために腰を牽引、するのだ。永谷園の株が未曾有の大暴落を果たした際の化粧まわしのような器具を装着し、脇にストッパーを挟んでスイッチオン。8分間。

結果からいうとすごく地味だった。体重に比例した力で織姫をさらに下に引くのだが、当然と言えば当然だがこのスピードが緩い。加えてこれも当然と言えば当然、元の位置に織姫を同じようなスピードで戻すという単純作業、このやる気のないピストン運動を8分。なんだかスーパースローカメラでエロスビデオを映してるみたいな気分になってきて、とすればさしずめ私は女優か、などと笑えない冗談を脳内供養しているうちにゆりかごのようなリズムのせいか眠くなってきた。徐々にまどろみの中に沈んでいく。目が覚めるころには、きっとアラスカ辺りに着いているはずさ。